お世話になったあの人に、喜んでもらえるギフトとは
「今度、S先生のお見舞いに行こうと思っているんだけど、一緒にどう?」
先日、記者時代の先輩からメールが届きました。
S先生は、自宅でアトリエを営んでいる、洋裁の達人。アパレルメーカーや服飾専門学校講師として経験を積んだあと、次世代に“ものづくりのおもしろさ”を伝える活動に力を入れています。
私がS先生と出会ったのは、記者になりたての新人時代。当時、私の担当ページで、S先生の監修による“洋服のリメイク術”という記事を一年間連載したことがご縁でした。
記事のイロハはもちろん、洋裁についてはド素人の私に、S先生はいつもやさしく、わかりやすいことばで教えてくださり、ときには手料理をごちそうになるなど、公私ともにお世話になっていたのです。
そのS先生が、一年ほど前から体調を崩されていると聞いていました。
「S先生のお見舞い、ぜひ一緒に伺わせてください」と先輩のメールに返信し、その足で日本橋の「榛原」のお店を訪ねました。
何かS先生に喜んでいただけるようなギフトを探そうと考えたからです。
てかがみ、千代紙小箱、華たんす……。榛原アイテムのゆるぎない魅力
榛原は、創業200年以上の和紙の老舗。ここには、人々に長年愛されてきた、和紙や千代紙を使ったオリジナル雑貨がたくさんそろっています。
華やかでかわいいものが好きなS先生は、きっと、榛原アイテムを気にいってくれるはず。
粋でポップな色合いの商品が並んでいる店内を30分ほど散策し、S先生へのギフトによさそうな商品をいくつか見つけました。
その商品とは、「榛原千代紙 てかがみ」「六角筆筒(ろっかくふでつつ)」「千代紙小箱」「華たんす」「千代紙フォトフレーム」「蛇腹メモグラム」。
では、それぞれのアイテムの特徴や魅力を紹介しましょう。
「榛原千代紙 てかがみ」
「かわいい!」と店内で思わず口に出してしまった、手のひらサイズの手鏡。明治・大正期から受け継がれている、榛原オリジナルの千代紙文様が使われています。
「桜に橘」「六花」「桜」「重陽」「色硝子」「風待ち草」など、粋でレトロな図案のラインナップは、眺めているだけでワクワクします。
軽くて持ち運びやすいから、小さなバッグやポーチに入れて普段使いができるのも魅力です。
「六角筆筒」
美しい榛原千代紙を使った、折りたたみ式の筆筒です。筆記具やはさみ、メガネ、リモコンなど、デスク周りの小物を立てて整理できる優れもの。
こちらの商品も、「波に子等」「花虫唐草」「牡丹」「おしどり」など、人気柄のラインナップがそろっています。
折りたたんだ状態でパッケージされているので、持ち運びにもかさばらず、海外の方へのお土産としても人気があるそうです。
「千代紙小箱」
“箱”って、なぜこんなにも人を惹きつけるのでしょう。中でも、榛原千代紙の図案が使われた「千代紙小箱」は、まるでファンタジー空間のよう。キュートな箱の中に、何を入れようか……と考えるだけで心が弾みます。
千代紙小箱には、名刺サイズの小箱と、蛇腹便箋レターセットが入る文箱、2つのサイズがそろっています。
小箱と文箱を同じ柄でそろえたり、別々の柄をセットにしたり、いろいろな楽しみ方ができますね。
「華たんす」
日用品かつ美術品としても愛されている、うっとりと見とれてしまう、おしゃれな小引き出し。職人が一つひとつ繊細な手仕事でつくっているという、どこから見ても美しい商品です。
三段の引き出しを重ねたときに、図案がきれいに見えるよう、千代紙の柄合わせを調整したり、引き出しの内側も千代紙を使って仕立てたり、細部にまで伝統の美意識が光っています。
手鏡やメモ帳、腕時計、アクセサリーなど、身の回りの小物の整理整頓に活躍してくれそうですね。
「千代紙フォトフレーム」
じつは、いろいろな使い方ができる、おしゃれな写真立て。榛原千代紙を使った表紙を開くと、丸窓と四角窓の二面の構成になっています。
写真を飾るだけでなく、お気に入りのポストカードやペーパーコースター、ハギレなど、サイズを調整して入れると、粋でスタイリッシュなインテリアになりますよ。
「蛇腹メモグラム」
榛原の看板商品「蛇腹便箋」の技術を使ってつくられた、ユニークな発想のメモ帳です。
表紙は、レトロでモダンな榛原千代紙のデザイン。中紙にも千代紙の文様が品よくあしらわれています。
ページは蛇腹状に折りたたまれ、折り目ごとにミシン目がついているので、好きなところで切り取れるのが、かなり便利。ちょっとしたメモやメッセージカードとして、いろいろな場面で重宝します。
大切な人に贈るなら、伝統の技術と息吹が受け継がれた、美意識の宿るものを
S先生のお見舞いの品に、どのアイテムを選ぼうか……。
候補にあげた商品の中から、私が選んだものは、「華たんす」と「てかがみ」の2つ。どちらも「重陽」の図案をセレクトし、「華たんす」の引き出しに「てかがみ」を入れてプレゼントしました。
パッケージを開けるやいなや、「あらぁ、かわいらしい絵柄ね」「眺めているだけでワクワクするわ」と瞳を輝かせたS先生。「華たんす」や「てかがみ」を手に取り、頬を緩ませながら、子どものころに千代紙で遊んだことや、洋裁のデザインや色合わせのことなど、いろいろな話をしてくれました。
先生のお元気そうな姿にホッとしながらの帰り道、改めて、ギフトのもつ力の大きさを実感しました。
大切な人への贈り物には、伝統の技術や息吹が受け継がれた、美意識の宿るものを。
相手の笑顔を思い浮かべながら選んだ品は、贈る側と贈られる側、両者にあふれんばかりの多幸感とやさしい時間をもたらします。