ぽち袋 ~江戸っ子たちも注目した、粋でかわいいデザインとは

ぽち袋

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ぽち袋の世界観に魅了され、大切にコレクション

「ぽち袋」って、なんともかわいいネーミングですよね。お祝儀やお年玉、心付けなどを入れる、小さな祝儀袋です。
なぜ「ぽち」なのか? ネーミングの由来は諸説ありますが、関西地方の方言で「ちょっと」とか「ほんの少し」を意味する「ぽちっと」ということばが語源になったといわれています。確かに、「少しだけ」を表すときに「これっぽっち」と言ったりしますよね。

お店などで、ぽち袋が販売されているのを目にすると、大人になった今でも、思わず心が弾みます。子どものころ、お正月やお盆には、必ず親戚一同が集まり、にぎやかな時間を過ごしていました。いとこたちとワイワイ遊んだり、ごちそうやお菓子をたらふく食べたり、楽しいこと尽くしの中でも、とくに嬉しかったのが、親族の大人たちからぽち袋をいただくことでした。

……というと、お金をもらって喜んでいるヤツに見えますが、じつは小学生時代の私は、中に入っているお金よりも、ぽち袋そのものを集めるのが好きだったのです。
かわいい動物たちがイラスト風に描かれたぽち袋、パステルカラーに英語のロゴをあしらった、大人っぽいデザインのぽち袋、温もりのある和紙が使われたぽち袋など、毎年、親族に会うたびに、新顔のぽち袋たちが私のもとに集まってきます。
現在も文房具店などには、さまざまなぽち袋が並んでいますが、昭和ど真ん中世代の私の子ども時代のほうが、ぽち袋バリエーションはより豊かだったような気がします。

小学生だった私には、小さなぽち袋の一つひとつに、それぞれの物語がぎゅっと詰まっているように感じられたのでしょう。写真用のファイルに丁寧にコレクションし、ときどき眺めては、あれこれ妄想を楽しんだのを思い出します。

でもね、ぽち袋のコレクションって、そう珍しい話ではないんですよ。
時をさかのぼること江戸時代、ぽち袋は、印刷技術(手摺りによる木版画)によって、大きく発展を遂げました。当時流行した浮世絵風の絵柄や人気絵師によるデザインなど、図案はどんどん洗練され、コレクションする人や鑑賞品として愛でる人など、ちょっとしたムーブメントが起きていたのです。

さて、こうなると、「江戸時代には、いったいどんなぽち袋が使われていたの? どんなデザインだったの?」と気になってきますよね。
そこで今回は、江戸時代から伝わる図案や型紙を復刻してつくられた、榛原のぽち袋をご紹介します。

江戸の美意識を今に伝える、型染柄のぽち袋

榛原に伝わる図案を用いて仕立てた、風雅な佇まいのぽち袋。デザインの基礎となっているのは、江戸時代より榛原に収蔵されている「伊勢型紙」です。

早春を告げる「流水に梅」、
愛らしい蟹が戯れる「川あそび」、
秋の七草の一つ「桔梗」、
水面を駆ける「波うさぎ」、
幸福の象徴である「ふくら雀」、
型紙らしさが際立つ可憐な「花つなぎ」。

流水に梅
川あそび
桔梗
波うさぎ
ふくら雀
花つなぎ

選ぶのに迷ってしまうほど、素敵なデザインの全6柄が揃っています。
お札の場合、三つ折りにして入れるとちょうどよいサイズ感です。

デザインのかわいらしさにきゅんとする、榛原復刻図案ぽち袋

次にご紹介するのは、「榛原聚玉(しゅうぎょく)文庫」に伝わる図案を復刻した、「かわいい!」と心が躍るぽち袋です。
「聚玉文庫」は、榛原の4代目当主・榛原直次郎(中村直次郎)が「日本の美しい紙文化を後世に残したい」という強い思いから集積した、貴重な和紙のコレクション。

モチーフやデザインがとにかくかわいらしくてキュートで、当時の人たちの粋なセンスや世界観がしっかりと息づいています。

商売繁盛の縁起物としても知られる「まねきねこ」、
二羽の千鳥が仲良く飛んでいる「波千鳥」、
正面から描いた鶴の表情がなんとも愛おしい「松にツル」、
明治時代の日本画家・綾岡有真の団扇絵図案を復刻した「雪輪うさぎ」、
安産や無病息災、魔除けを祈願する「いぬ張り子」、
桜の花を緋と白の対比と鹿の子模様で表現した「櫻」、
秋の情景である紅葉の美しさを表現した「紅葉」、
不老長寿を意味する、吉祥文様の菊を繋げた「菊繋ぎ」、
菊の持つ吉祥性に、岩菊の花の可憐さが加わった「岩菊」、
“柳と燕”という定番のモチーフを使った「柳に燕」。

どの絵柄にも、ものがたりや温もりが伝わってくる、全10柄のラインナップです。
ちょっと小ぶりの控えめなサイズなので、お札の場合は4つ折りでちょうどいい感じ。

まるで小さな絵本を並べているような、ものがたりや味わいがつまった、榛原の復刻ぽち袋の世界、いかがでしたか?
そうそう、お金を渡す用途だけでなく、アイディア次第でいろいろな使い方ができるのもいいところ。
たとえば、小さなお菓子やカードをちょこっと入れたり、アクセサリーを入れてプレゼントしたり、活躍の場はたくさんありそう。
もちろん、江戸っ子みたいに、コレクションして世界観を楽しむのも粋だと思います。

記事で紹介した商品

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2022.11.15

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この記事を書いた人

小川 こころ

文筆家、ライター、文章講師。「文章スタジオ東京青猫ワークス」代表。

人やものが織りなす物語やかけがえのない瞬間を、ことばや文章で伝えることに情熱を注ぐ。手書きが好き、紙モノ大好き。新聞記者やコピーライターを経て現職。まなびのマーケット「ストアカ」にて4年連続アワード受賞。著書は『ゼロから始める文章教室 読み手に伝わる、気持ちを動かす』(ナツメ社)。

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