一筆箋 ~大正ロマン“竹久夢二”の図案のひみつや、手書きが生み出す効果とは?

一筆箋

目次

「モガ」だった祖母のコレクションは、夢二のアイテムでした

昭和世代の私が小学生だったころ、大正生まれの祖母と同居した時期がありました。大正末期から昭和初期といえば、それまでの和装から、西洋文化の影響を受けた「モガ(モダン・ガール)」「モボ(モダン・ボーイ)」とよばれる新たなファッションが生まれた時代です。

おしゃれ好きな少女だった祖母も、当時大流行していた膝下スカートや「アッパッパ」とよばれるゆったりスタイルのワンピース、頭にフィットする釣り鐘型の帽子「クロッシェ帽」などの「モガファッション」を楽しんでいたそう。

そんな祖母が若いころからコレクションしていたのが、“モダンアートの立役者”竹久夢二の画集や絵ハガキなどのアイテムです。夢二の世界観をまねして絵を描いたり、人形の衣装をつくったりするほど夢中だったとか。小学生だった私も、祖母のコレクションを見せてもらったことがあり、「竹久夢二って、こんなにおしゃれですてきな絵を描く人だったんだ」と驚いたのを覚えています。

甘美でスタイリッシュな作風……大正ロマンを代表する画家

カラフルでモダンな色使い、憂いをおびた女性の眼差し、のびやかなポーズ、洗練された衣装……。大正ロマンの象徴として、抒情的な女性画で知られる竹久夢二は、明治・大正期に活躍した画家・詩人です。

美術学校で基礎や技術を学んだ正統派の画家とは異なり、新聞のコマ絵や大衆向けの風刺画からキャリアをスタート。これまでにない、独自の美意識にあふれた自由でスタイリッシュな作風は、世間を驚かせました。彼の手がけるイラストや広告デザインに、当時の若い女性たちは夢中になり、ファッション・アイコン的な存在として注目を浴びました。

四代目当主の依頼で、榛原のブランドデザイナーに

若いころの夢二は、日本橋を活動の拠点としていました。とくに親交の深かった四代目榛原直次郎(中村真太郎)は、夢二が欧州へ旅立つ際に旅費を援助するなど創作活動をサポートする一方、榛原の商品デザインを依頼。これをきっかけに、榛原のブランドデザイナーとして活躍することになったのです。

もともと女性画をメインに描いていた夢二に、榛原四代目は「旅に出て、そこで出合った風景や自然をモチーフにしてはどうか」と提案しました。その言葉に導かれるように、夢二はさまざまな土地を旅しながら、自然への愛をこめて、花や木々などの姿を描きました。
夢二の描いた旅情豊かな作品は、便箋、絵封筒、絵はがき、千代紙、うちわなどの図案に採用され、榛原の人気商品を次々に生み出していったのです。

薔薇、萩、紅梅、水辺、胡瓜。絵封筒の図案を復刻した一筆箋

夢二が描いた絵封筒の図案をもとに復刻したのが、今も多くのファンをもつ「竹久夢二 一筆箋シリーズ」です。
たおやかな女性が佇んでいるような「薔薇」、清らかな水がやさしく心に満ちてくる「水辺」、子どもたちの笑顔が弾けているような「椿」、みずみずしいキュウリとユーモラスなアリの組み合わせがおもしろい「胡瓜」。

夢二の選ぶモチーフは、どれも愛らしく、凛とした美しさを感じます。榛原のスタッフさんから「『水辺』や『胡瓜』など、一筆箋の帯についているネーミングは、詩人でもある夢二本人が考案したものなんですよ」とうかがい、ますます愛着を感じるように。

さあ、肝心の書き味はどうでしょう。もうすぐ誕生日を迎える友人に、万年筆で「お誕生日おめでとう! おいしいご飯を食べに行きましょう」とメッセージを綴ってみました。なるほど、繊細な肌合いの和紙が使われているので、すうっとインクが染み込み、筆の運びが心地いい。スタッフさんによると、万年筆をはじめ、ボールペン、毛筆、鉛筆など、幅広い筆記具に適しているそうです。

商品とともに届く、温かな手書きのメッセージ

榛原では、オンラインで購入された商品を発送する際、一筆箋を使って、お客様のお名前を入れた、手書きのお礼状を添えています。
「一人ひとりに手書きの手紙を綴るのは、けっこう大変な作業では?」とたずねると、榛原のスタッフさんから、こんな言葉が返ってきました。

「確かに、時間の効率化などの観点から、『印刷したお礼状でもよいのでは』と考えることもあります。けれども、『手書きのメッセージ、心がこもっていて嬉しかった。ありがとう』とお客様からご感想をいただくことも多く、これからも感謝の気持ちをお伝えするため、続けていきたいと思っています」。
和紙の専門店として200年の時を重ねながら、「書くこと」「想いを届けること」と真摯に向き合ってきた榛原の美学を感じます。

榛原には、「竹久夢二 一筆箋シリーズ」のほか、シンプルな罫線の入った「ひとふみ箋」、和紙の繊維や七夕紙をちらした「一花一葉箋」など、場面や状況に応じて利用できる、多様なラインナップがそろっています。

たった一行や二行書くだけで、言葉以上の気持ちが届く、一筆箋。
ビジネスやプライベートなど、さまざまな場面で使ってみてください。きっと、思いがけない効果を発揮してくれますよ。

記事で紹介した商品

オンラインショップの特定商取引法に基づく表記をご確認のうえご購入ください。

関連商品

一筆箋
2022.11.06

一筆箋 ~大正ロマン“竹久夢二”の図案のひみつや、手書きが生み出す効果とは?

この記事をシェア

この記事を書いた人

小川 こころ

文筆家、ライター、文章講師。「文章スタジオ東京青猫ワークス」代表。

人やものが織りなす物語やかけがえのない瞬間を、ことばや文章で伝えることに情熱を注ぐ。手書きが好き、紙モノ大好き。新聞記者やコピーライターを経て現職。まなびのマーケット「ストアカ」にて4年連続アワード受賞。著書は『ゼロから始める文章教室 読み手に伝わる、気持ちを動かす』(ナツメ社)。

記事一覧

前の記事

榛原の便箋 ~西郷隆盛も愛用した、気持ちが伝わる“粋”な便箋

次の記事

榛原のギフト・和紙小物 ~大切な人を笑顔にする、榛原千代紙アイテムの力

おすすめの商品

一筆箋
2022.11.06

一筆箋 ~大正ロマン“竹久夢二”の図案のひみつや、手書きが生み出す効果とは?

Pagetop