榛原を訪れた方の中には、店頭でスタッフが水引を結んでいる光景を目にされた事がある方もいらっしゃるのではないでしょうか。婚礼、出産、仏事など、人生の節目となる場面で贈答に用いられる水引は、色分けや結び方の中に、受け取る方の幸せを願う様々なメッセージが込められています。
そんな、水引に纏わる作法と、手仕事の話を、本日はご紹介いたします。
水引とは
水引とは、紙縒りに糊剤を溶かした水を引いて固さを与えた物で、贈答品の装飾に用いられます。
歴史的には、遣隋使の小野妹子が帰朝した際、隋からの返礼使が携えてきた贈り物に結ばれていた紅白の麻紐が起源と言われています。一般的な水引は、中央から白赤・金銀・金赤・白黒等に染め分けられ、贈答の用途に合わせて使い分けられます。
水引を「結ぶ」という行為には、目に見えない様々な要素が集まって物事が成就する祈りが込められており、一種のまじない的な要素が込められています。その象徴的な結び目に、二つの異なる色を絡ませることによって、より意味付けの効果を高めたのではないかと考えられています。
水引の色分けに込められた祈り
水引に使われる白、赤、黒、金、銀は、どれも日本の包みの作法の中では大切な意味を持った色です。
白:色である以前に光、つまり太陽の象徴として受け止められます。また、白は素であり、原初の意味合いも持っています。古来以来、白は全ての色の中で常にもっとも高貴な色とされていました。
赤: 日の昇る喜びの色を表します。また、人間の血液を意味するとされ、人間の生命力の象徴でもあります。
黒:夜明け前の闇が、これから光が訪れる予兆であるように、これから希望が訪れる期待を意味しています。また、黒はすべての色を合わせ持つ色でもあります。
金銀:豊かさの象徴として考えられてきました。
水引の色分けの作法として、白赤、金銀、赤金は祝い事に、白黒、双銀は不祝儀に用いられています。御祝、御礼、季節のご挨拶などは白赤を基本とし、さらに婚礼などの晴れやかな祝い事には金銀や、赤金を使います。
白黒、双銀は、弔事に関わる一連の行事の進物に用い、悲しみの深さの薄れるにしたがってその色を薄い物にするとされました。
水引の結び方
水引の結び方には、大きく分けて花結びと結び切りがあります。
花結びは結いほどけとも呼ばれていて、何度もほどいたり結びなおしたりできる蝶結びを指します。出産、昇進、転居など何度あっても良いお祝い事や、一般の贈答(結婚を除く)に使用します。
結び切りとは、決して解けない固結びのことを指します。結婚祝い、お見舞い、仏事など、二度あってはならないことに対して「これっきり」という意味で使用します。
榛原では、店頭でスタッフひとりひとりの手で水引を結んでおります。
贈り物の文化や礼節・作法を通じて、お客様の真心を伝えるお手伝いをさせていただくことも、和紙を扱う私達の大切な使命と心得ておりますので、これからも水引の文化を次世代に引き継いでまいりたいと思います。