美しい木版画を施した団扇は、文化3年の創業時より、榛原の人気商品となっています。
時代の趣向に合わせて、人気絵師が描いた図案を木版摺りし、職人による丹念な手仕事で一本一本仕上げて参りました。
こうして作られた団扇は、手に良く馴染んで大きな風を起こす夏の必需品として人々の生活を支え、同時にファッションアイテムとして愛好されました。
現在でも、その心を忘れず、団扇を店頭にご用意しています。
本日は、榛原で扱っている団扇の中から、木版摺り団扇と柄長小町に纏わる手仕事をご紹介いたします。
柄長小町
千代紙を貼った小ぶりの扇面と、長い柄が特徴の柄長小町。浴衣の帯にさしても美しい、榛原の人気商品です。
こうして、骨を整えた後、千代紙と和紙を両面から貼り、はみ出した竹骨を切りそろえ、ふちに糊付けした和紙を巻きます。
最後に、柄に焼印を押して完成となります。 竹の太さが一本一本異なるため、見当を付けながら扇面の裏に「榛原」の文字を入れます。 こうして、正岡子規が詩に詠んだ焼きじるしある榛原団扇が仕上がります。
鶏が鳴く あつまの江戸の はい原の 焼きじるしある 絹団扇かも
(明治31年「定本子規歌集」より)
木版摺り団扇
榛原では、江戸期以降に扱っていた人気画家の筆による団扇絵を、現代の趣向を加えながら木版摺りで復刻しています。
手仕事ならではの彩色と、繊細に伸びる竹が美しい品です。
骨組みを十分に乾燥させた後、木版摺りした扇面を正面に貼り、はみ出した竹骨を大きな鋏で切りそろえます。最後に糊付けした和紙を淵に巻き、柄を差し込んで完成となります。