【春を愛でる】ともに春を待ちわびる雛人形

四季の暮らしと榛原
2022.11.28

梅や桃が少しずつ咲き始める、関東の3月。
私の職場では、手先のリハビリや頭の体操として、その時期に咲く花、旬の果物や野菜を、折り紙で創作する。季節感を味わえる活動は人気がある。患者さん達との折り紙を楽しみながら、ふと故郷で過ごした子ども時代のひな祭りを思い出した。

陽の光に春の気配を感じ始める、ゆき国の3月。
故郷では、まだ白銀の世界のなか「ひな祭り」を迎える。幼い頃は着物を着て、7段飾りのひな壇の脇にちょこんと座り、姉妹や祖母と記念撮影。イベント感いっぱい、楽しむ雰囲気がにじみでていた。
小学生になると雛人形の飾り付けは三姉妹の仕事に。箱を開け人形を包んでいる白い薄紙を広げ、出しては飾り、出しては飾りを繰り返してひな壇を完成させる。
が、ひな祭りの日が終わると「片付けが遅くなると嫁に行き遅れるよ」という母の掛け声で早々に箱に戻すのも毎年恒例だった。

その甲斐があってか三姉妹はそれぞれ結婚し、妹に女の子が生まれた。今度は、祖母となった母がコツコツとひな人形を飾り、初孫を昔の私たちのように雛壇の脇に座らせ、満足の笑みを見せていた。
令和生まれの姪っ子のおひな様は、美しさをキープできるガラスケース入り。生後7か月の初節句では、覚えたての寝返りで得意げにゴロゴロと移動し、ケースの前でニヤニヤ。勢い切りよく振り返っては足をバタバタさせる。いつものおもちゃとは何か違うぞと真っ白いお顔でピンク色の衣装を着たお人形に興味津々だ。

職場の創作活動では、折り紙や千代紙を前に「この色が好きなの」「この柄、かわいい」と会話がはずむ。入院生活に彩りが加わる瞬間だ。いざ折り始めると「意外と指先の力がいるわね」「この次はどう折るの?」と手先と頭をフル回転。和気あいあいと作った後は完成品を持ち帰る人、リハビリ室に飾って皆さんにお披露目したい人、各々に味わい方があるのがまた良い。

子どもの頃に夢中になった折り紙は、大人になっても、やっぱり夢中になってしまう。最近のお気に入りは、榛原の「千代紙おりがみ」。花や雪を模した柄と上品かつ華やかな色合いに心惹かれる。指先に伝わる和紙の滑らかさは一瞬折り目付けをためらわせるが、絵柄と色彩が創作意欲を掻き立てる。
そうだ、ひな人形を作ってみよう! まずは女雛で、次は男雛を。3歳になった姪っ子の喜ぶ顔を想像しながら。
いつか一緒に折り紙してくれるかな?と思いを馳せつつ、美しい千代紙を折っていく。

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この記事を書いた人

有乃ゆう子

理学療法士。
仕事では、赤ちゃんから高齢の方まで幅広い年代のリハビリテーションに携わっており、回復を喜ぶ姿にやり甲斐を感じています。趣味のフラワーアレンジメント歴は7 年。先生は元婚活仲間という、ちょっと愉快な師弟関係。お花一本一本を生かしつつ、バランスよくまとめる、意外と難しく奥深い世界にどハマりです。

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