毎日、お花見
お店の前、道を挟んだ向こう側の歩道に
大きな桜の木が1本あります。
レジカウンターの中から、外を見ると丁度、その桜の木がわたしの視界に入るのです。
そう! わざわざお出かけしなくても、わたしは毎日、お花見をしています。
春は、お店番をしながら、ちょっと得した気分です。
つぼみがふくらんで花が咲き、目の前で、少しずつピンク色が広がっていきます。
そして、そろそろ満開かな? と思ったころ、今度は子どもたちの元気な声が聞こえてきます。
桜の木のさらに向こう側には、小学校のグラウンドがあって、
新学期が始まると同時に、キャー!ワー!の声。
春の声は、1オクターブほど高く聞こえてきます。
寒い冬から暖かい春へ、桜と子どもたちの声に元気をもらって
寒さで縮こまっていた、こころとからだが緩んでいくのを感じます。
春を感じるパン
桜の季節、小さなパン屋のラインナップに登場するのは「桜あんパン」です。
きっと、あんこ好きの方なら、一度は食べたことがあるパン。
いろいろな種類の桜あんパンがあって、かたちが桜の花びらのようなパンや、桜色をしたパンもあります。
小さなパン屋がつくるのは、自家製あんこに桜の塩漬けを混ぜてつくる“桜あん”が入った、桜あんパン。
甘いあんこが、甘じょっぱいあんこになって、ツウには人気のパンなのです。
わたしのおやつ時間
お店にいても、工房にいても、家にいても、大切にしている「おやつ時間」。
大人になってからのおやつ時間は、癒しに近いものがありますね。
だから『おいしいものを心地よく』。これがわたしのおやつ時間のテーマです。
できあがった桜あんパンを、榛原の「大人のためのおりがみ さくらさくらさくら」を懐紙がわりに使って、桜のお茶と一緒にいただきました。
毎日はできないけれど、たまに、少しだけこだわってみたり、演出してみたり。
こんなおやつ時間が、次のアイディアを生んで、小さなパン屋の手しごとにつながります。
POPにこめる思い
桜あんパンと一緒に届けたい思い。
春はお店のPOPにこめて、届けてみようと思います。
お店から桜を見ていて、心を動かされるのは、満開からの桜吹雪。
思わず手をのばしたくなる、そんな気持ちです。
この桜吹雪を、和紙で表現できないかな?とイメージして、POPをつくることにしました。
うまくいくかなぁ……。
使ったものは、和紙でつくられた「木版手摺絵はがき」。
ちょうど、さくら模様の絵はがきがありました。
まずは、はがきを水につけてふやかした後、小さくちぎって花びらづくり。
(せっかくの絵はがきを台無しにして、ごめんなさい!)
乾きかけたところで、ひとつひとつ、POPを飾るようにのり付けしてみました。
和紙の毛羽立ちが、雰囲気を出していると思いませんか?
そして最後に、色鉛筆と水筆で、少しだけ桜色に色づけして完成です。
早速、できあがったPOPにメッセージを書いて、桜あんパンの前に置きました。
POPには、こんな思いを込めてみました。
甘じょっぱいあんこと、ほのかな桜の香りを味わいながら
からだ全部で「春」を感じてください。
冬の間、じっとしていたからだのあちこちが、動きはじめます。
春ははじまりの季節ですね。