味覚の秋
小さなパン屋の秋は、仕込み!仕込み!仕込み!
休日ともなれば、台所にこもって、秋の食材と格闘です。
いちじく、栗、りんご、さつまいも……と続き、
ジャムやペースト、コンポート等々、旬の食材を違ったカタチに変身させていきます。
暑い夏に食欲ダウンしていたお客さまも
この“秋の味覚”のタイミングで、食欲も復活し、ご来店くださいます。
私も気合十分で仕込みに励み、秋のパンを作っています。
一番人気は「くりのパン」。
うれしい反面、実はこの栗の手仕事が一番厄介!
仕入れた栗は、冷蔵庫で熟成させます(これで甘味がアップ!)。
仕込みの前日からお水につけ、ゆでること1時間。
ゆであがった栗の実をとり出し、牛乳ときび糖で煮詰めて、最後はミキサーで仕上げて完成。
以前は、皮をむいたり、裏ごしもしていましたが、今は少し手抜きも覚えて、毎年定番の栗のペーストを作っています。
手仕事にこだわる意味
わざわざ手作りしなくも、売られている世の中。
素材にこだわった、美味しいものもたくさんあります。
いちじくを仕入れなくてもいちじくジャムを買えばいい。
栗を仕入れなくてもマロンペーストを買えばいい。
そう思いながら、手仕事にこだわるのはなぜか?
同じレシピをつかったジャムも、オートメーション化の中では同じジャムになります。むしろ、そうでなければいけません。
でも、人が作ると違います。どんなに同じレシピを使っても違うジャムになる。
それは、人の手がはいるからです。
作り手の「個性」が、そして「思い」が、あらわれるからだと思います。
これも小さなパン屋だからできる、思いの伝え方ですね。
手仕事にこだわる理由なのです。
秋のメッセージカード
一度チャレンジしてみたかった「芋判」。
愛用している「ちいさい蛇腹便箋」に、秋の風を吹き込んでみることにしました。
といっても、作り方は簡単です。
お芋の断面に、栗の絵を描いて、彫刻刀で線を掘っただけ。
栗色のスタンプを使うと、ほらこの通り!栗に見えませんか?
栗のハンコを買わずに、こんな風に、ちょっとひと手間かけて芋判をつくる。
カッコよさはないけれど、他にはない、味のあるメッセージカードができあがりました。
秋のパンと一緒に届けたい思い
いつも以上に手仕事が感じられる秋のパン箱。
懐かしい母親のような、やさしい温かさを伝えたい。
それは甘すぎない、素材の味から感じていただけるかもしれません。
くりのパンを、丸ごとガブッとかじってみる。
ひと口もぐもぐ、ふた口もぐもぐ。
口の中いっぱい、「栗」そのものが広がることでしょう。
おなかもこころもあたたかになってくださいね。