もう15年くらい前でしょうか、観光客であふれる秋の奈良でひときわ目立つ大行列に衝撃をうけました。
行列の正体は、奈良国立博物館で開催されている「正倉院展」。 これだけの人を惹きつける正倉院展に惹きつけられたわたしは、そこから毎年秋の奈良を訪れています。
正倉院とは奈良時代、東大寺の大仏を造立した聖武天皇の愛用品を中心とする、約9000点もの宝物がおさめられた倉庫です。「正倉院展」は、ここにおさめられた宝物の一部を10月末から11月中旬の期間限定で見ることができる貴重な展覧会なのです。
出展される宝物の中でも、外国のかおりのする宝物にわたしは特にそそられます。
鮮やかな色の器、面白いかたちの水差し、螺鈿や紫檀を贅沢につかった楽器や鏡……。ローマやペルシャの文化が香るものたちがシルクロードを通り唐に辿り着く。そして唐から日本へ、海を超えてやって来たのです。そのため正倉院は「シルクロードの終着点」と呼ばれているそう。
国際色ゆたかな宝物を集めて楽しんでいた聖武天皇は、きっとオシャレな人だったんだろうなぁと妄想してしまいます。「正倉院展」に出展される宝物は年々変わります。だから毎年行っても初めましての宝物に出会えるのです。
そしてもう1つ、秋の奈良の楽しみは、奈良在住の親戚夫婦がアテンドしてくれる神社仏閣めぐり。わたしは必ず御朱印帳をもって行きます。
お寺でいただく御朱印は、もう芸術品の域。柔らかくも大胆な筆づかい、パワフルな美しさ。力がそこに宿っています。 見るたびに心おどる、1つ1つの御朱印はわたしの宝物です。
それにしても、わたしの御朱印帳、笑えるくらい10月や11月の日付の奈良周辺のお寺ばかり。 そんなスローペースの初代御朱印帳もいっぱいになってきました。
2代目御朱印帳として迎え入れたのが、榛原さんで購入した御朱印帳「色硝子 赤」。
キリリとした柄、燃えるような紅葉を思わせる赤色の千代紙を使ったカバーに一惚れです。 秋にだけ活躍するわたしの御朱印帳にぴったり。 手触りもなんだか懐かしく、もうすでにわたしのお気に入りになりました。
真っ白な和紙にこれからまた宝物を1つずつ、この2代目に集めていくのです。
こうして綺麗な宝物をあつめたりながめたり、聖武天皇の気持ちが私にはよくわかります。